ゲイが市井で暮らすのに、嘘はいくつ必要ですか？ もうすぐ。

メシを食った後、涼みがてらドライブをすることになった。

「部屋に入っちゃまずいだろう？旦那いるし」
「旦那帰省中。でもダメ」
「ふうん」
「ホテルでもいく？」
「ダメ」
「ふうん。・・・・お前はやっぱり大学に行くべきだったよな」
「何今頃？」
「高卒じゃやっぱいろいろ大変だろ。よくやってるとは思うけど」
「何でそんな話ｗ」
「なんとなく昔を思い出した。家の金３００万盗んで、これで進学しろ
　って言ったらわんわん泣いて怒ったよな。意味わかんねぇｗ」
「ああいうの恋人に対して失礼だと思うんだけどｗ」
「かもしれないけど。それでもお前は大学に行くべきだった」
「そうかな？あんまかわんないと思うけど。
でも進学してたら大輔さんと出会わなかった」
「そうか」

しばし沈黙がよぎる。

別れた男との会話の中心は自然と昔話、思い出話。
昔を語ることはできても、二人の明日を語る術はない。
もし、明日をかたるとするならそれなりの覚悟がいる。

「そういえば、大輔さんの彼氏は今日どうしてるの？」
「今、仕事でドイツとイタリアに行ってる」
「まさか、又同盟でも結ぶつもりなんじゃ」
「何時代の話だよ（笑）」

沈黙。

なぜ大輔さんは車をずっと走らせてるんだろう。
なぜ俺はずっと隣にのったまま、帰ると言わないんだろう・・。
体交わすことを期待してるのだろうか？

「ボーナスゲームって知ってる？」
「ボーナスゲーム？」
「そ、昔のカップルが一度だけ一夜をともにして楽しむことなんだって。
　後腐れなく。きれいさっぱりとひきずることもなく。
　アメリカのテレビドラマで言ってた。レイチェルとロスのように」
「トムとジェリーのように」
「タッキーと翼のように」

長い沈黙

誘ってるじゃん。完璧に。大輔さん頼むよ。
タイミングが悪すぎる。
なんかテレビドラマみたいだ。

「なんかテレビドラマみたい。昔の男が復縁をせまってくるｗ」
「せまってないｗせまってないｗ」

二人は冗談を言いながら、その裏では真剣な話をかわしている。
それを最初に言い出すのはきっと彼からだろう。
そのきっかけを俺は待ってるのだろうか？