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31

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幸せでいたいなら誰にも会うな

人生、幸せでいるための秘訣がある。
あまり誰も言葉にしないようだけれど、実はこう思うのだ。

不幸は必ず出会いからもたらされる。

ということだ。

出会いがあれば必ず別れが来る。
心を許せいつか必ず裏切られる。
人に傷つけられることも嫌だけれど、
人を傷つけることほどつらいことはない。
そう思いながらいつも生きているような気がする。

一人で生きていけば、余計な重荷を背負うこともない。
賢い人はみな、一人で生きる道を選ぶ。
いささかペシミスティックに過ぎる感もあるけれど。

人付き合いをストレスなく過ごしている人にはあまり
賛同を得られないだろうけれど。

また、皆から考えすぎだよと笑われるだろうなw

だからといって人に会いたくないと言うわけでもない。
そうやって生きていくには財力も、才能も足りなさ過ぎる。
そして、一人で生きていく覚悟もいささか不足している。
そうして、愚かな俺は人恋しさに誰かの名を呼ぶ。
これからも何度もそういうことを繰り返すのだろう。

***************************

今日の夜中もしくは明日の夜までに、ちょっとした仕掛けをほどこしました。
少し驚くことが用意されています。
期待していてください。(何もなければごめんなさい)

03

29

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シシマルの不在

夜勤明けの今日の朝。

日曜日だし、たまにはシシマルと一緒に
昼飯でも食おうと思って弁当を2個買って帰る。
彼は割と駅弁が好きなので、珍しいのを選んでみた。

しかし家に帰ると、シシマルは不在であった。
日曜日の朝からいないの?
不信に思い、携帯に電話してみるが、留守電に
切り替わるだけだ。

少し待ってれば帰ってくるかと思い、仮眠を取ることにした。
13時過ぎに、部屋のチャイムがなり、起こされる。
どうやら3時間ほど眠ってしまったみたいだ。
チャイムを鳴らしたのは宅配便業者だった。
シシマルあての荷物を受け取る。
13時?
シシマルはまだ帰ってきていない。
どこかに遊びに行ったのか?
なぜ電話に出ないのか?
それとも電話に気がついていないのか?

そのとき、予感がした。
彼はミスを犯したのではないだろうか?
カレンダーに記されている俺の当直日時を読み間違えたのでは?
台所のゴミ箱を見る。
土曜日の朝、俺の分とシシマルの分と1個ずつ買っておいた
サンドイッチの残骸が一番上にあった。
今日の朝に食べたものではない。
これはシシマルが土曜日の朝に食べたサンドイッチのフィルムだ。
ということは、彼は昨日の朝もしくは昼から
一切ゴミを出していないことになる。

外泊しているのだ。
またか、と思った。
予兆はあった。
そろそろ危ないころじゃないかなとは思っていた。
浮気程度ならいいとは思っていたけれど、外泊となると又別の話だ。

しばらく台所の床に座って考えをまとめようと思った。
でも、何も考えられない。
思い立って、すべての部屋の電気をつけて回る。
玄関も、廊下も、風呂場も、リビングも。
何がしたいのかは自分でもわからない。
だが、暗い部屋の中でいることに耐えられない。
数週間前ずっと一緒にいる見守るという言葉を、
シシマルは時計とともに送ってくれた。
それは信じたのだけれど、その言葉の裏に「恋人としてではない」という
ニュアンスを感じ取ってもいた。
長年付き合っていれば、伝えたくないであろう言葉でも感じ取ってしまうものだ。
一人で夜中抜けだしてファミリーレストランで考え込んだりした日もあった。

別のことで俺が彼を傷つけ、心配かけたことも確かにあった。
これは、その趣旨返しなのだろうか?
いや、違う、そういうことではないのであろう。
彼の弱さも十分に知っている。
俺の弱さと同じ程度には。

あるいは、早朝から出かけてどうしても、19時になった今でも
折り返し電話ができない状況なのかもしれない。
(どういう状況だ?)

でも違う。
そこに彼の意思を感じる。
彼はおそらくバレてもいいと思っている。

このままこの家にいたくないと思い家を出る。
そのまま近所の喫茶店で遅めの昼飯を食い、散髪に行った。
それでも今日という時間は大量に残っており、
仕方なくこうやってネットカフェでブログなんかを書いたりしている。
おそらくシシマルは今日の夜23時ごろに帰ってくるつもりだろう。
今日が過ぎてしまうギリギリの時間に。

部屋の明かりは煌々としたまま家を出てきた。
古い歌の文句でもないのだけれど。

03

27

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一人マイクを

一人でカラオケに行ってきた。
なんだか無性に歌いたい気分だったのだ。
友達を誘うのも面倒だし、何より平日の昼間だし、
歌いたい歌だけ歌いたいので一人で行ってきた。

それでもなんだか一抹の寂しさを拭い去れずに、
カラオケ店の周りを2周ぐらいしてやっと入ったんだけど。
1時間70円という破格に安い店にした。
「お一人様?」というスタッフの確認の言葉に
疑問系のニュアンスが心にズシリとささる。
デブのおじさんが平日の昼間から一人でカラオケなんて所望して
どうも申し訳ございません。
汚いビルの小狭い部屋に通されたけど、一人きりだという
後ろめたさから何も言わずに席についた。
割と小心者なのだ。

CA3A010401.jpg
お行儀悪く足を投げ出したりしているw

サンボマスターとかユニコーンとか熱唱してみたのだけれど、
楽しかったのは最初の5曲ぐらいで、歌っているうちにだんだん飽きてき始めた。
何が飽きるのかって自分の歌の下手さ加減に嫌気がさしてきたのだ。
音域が狭いし、音も不安定だし、高音域で裏声になるし・・・。
今まで、友人たちとカラオケに行っても、
大抵俺が歌っている時って、ほかの人たちのおしゃべりタイムになってたもんな。
一緒に歌を口ずさんでくれたりとかそういうのなかったもんな。
おそらく下手糞すぎて、聞いてられなかったんだろう。

でも、2時間パックで部屋に入ってきたので、30分ぐらいで
退出するのはお金がもったいない。
こんなときかわいい男でもいれば、歌なんかほっぽって
イチャイチャできるのに。
(部屋の扉はガラス張りだけれど)
あいにく、今日は金曜日14時30分。
一般人は働いている時間だ。
歌うのも飽きて、部屋で一人、推理小説など読んでたりした。
なんだか、これはこれでもったいない時間の使い方だなぁ。

そのときロリダイラ(ロリータマツダイラさんが自虐的にそう名乗っている)
君からメールが届いた。
先日勇気を出して、メアド交換してみたのだ。
ここ最近の俺は社交的になりつつあるのだ。

「今度休みがあったらメシ行きませんか?勤務日程教えてください」

俺が先日部署異動したため、勤務日程がバラバラになってしまい、
彼とはこのまま疎遠になるだろうなと思っていた。
嬉しいことにマツダイラ君のほうからお誘いがきた。
つくづくメアド交換などやっておくものである。

2週間分のシフト予定をウキウキ気分でメールで返信。。
その気分を表現したくて、小沢健二の「痛快ウキウキ通り」を大声で熱唱する。

まもなく彼からの返信がきた。
「それはそれとして、今何されているのですか?」
「一人でカラオケをしております」と、正直に返す。
「(爆)」とだけ書いたメールが返ってきた。
ま、やはり笑われるわなw

帰りにポイントカードをもらって返ってきた。
どうやら又気が向けば一人で行くのかもしれない。
行くのか?
そのうち一人でディズニーランドとか行っちゃうような男になれるかもしれない。

03

24

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不毛のハゼゴン

「某君はなんだか苦労せずに育ってきたような顔しとるな」
と新しく配属になった先の上司から言われた。
こいつの話は、いい加減うんざりしてくる。
人を見る目もないくせに、勝手に人の人生決め付けるなよと思う。
それにしても、俺ってそんなに能天気な顔してるのだろうか?
こういうのにはありきたりな冗談で流すことにしている。
「はい、おかげさまで乳母日傘で育ってきましたものですから」
「オンバヒガサ?」
冗談も通じない。
やれやれと思う。

このハゼゴンに似た上司が本当に苦手だ。
先輩の僻みや嫌味などはそれなりにかわすのだけれど
この「俺は人を見る目が合って、人生なんでも知ってます」っていう
感じの人って本当に疲れるし、苦手なタイプなのだ。

「子供なんて、大きくなったら父親なんか相手にしなくなるだろう?
どこでもそうなんだよ。どうせ、某君も親と会話なんてしないだろう」
この人は俺のことを40前のオヤジと見ていないふしがある。
なぜか20過ぎに若造のように扱う。ま、いいんだけど。
「さぁ、どうなんでしょうか?うちは親がいないのでそういうのわかりませんね」と答えると
「親がいなくても一緒や、もしいたら会話なんかしないだろう?どうせそういうもんなんだって」
と返ってきた。
これには心底びっくりした。
俺としては、くだらないありきたりの一般論を流すために、
あえて返しにくいであろう「親がいない」というキーワードをちらつかせたのに
ハゼゴンは勝手に仮定を持ち出して、それに勝手に結論付けてきたのだ。
今まで回りにいないタイプの人のようだ。

「昔、ボインの同僚を車で送っていったとき、隣で寝た振りしおるんや。
ああいうのって絶対誘ってるってことやろ。絶対某君やったら手出すと思うわ
俺は理性で押しとどまったけどな」
いや、ボインだろうが女に手は出しませんってw

「顧客にもいろいろおるんやで。ヤクザみたいな言い方するやつもおるしな。
絶対某君やったらビビッて声も出せへんと思うわ」
いや、多分びびりません。

「女にはなめられたらアカンね。一緒に暮らしててもここぞと言うときには
ガツンってかましたらなアカンね。某君は尻にしかれて言い返さへんタイプやな」
別に伴侶に対してなめられるとかそういうこと考えながら生きていませんのでよくわかりません。

「おもろい話したろか。昔な・・・」
おもろい話したろか、から切り出す話に面白かった例がありませんので結構です。

「旅行に行ったときにコンパニオン呼んでな、30分5万円で5人ぐらい来てな、
そいつらがまたブサイクでな。来たとたんに帰れって行ってな、面白ないから
タクシーでストリップ小屋に行って、ほんならヤクザみたいなおっさんが奥の部屋で
サービスさせていただきますっ言いにきおってな、2万円で女がしごいてくれおるんやで。
自分らそんなん知らんやろ」
やっぱり面白くない話だったし、そんなのよくある話だし。

「俺もいまではこうしてるけどな。昔は悪さもいっぱいしたで。」
はい、その「昔は悪かった自慢」はオヤジの自慢話ランキング1位
ですから、特にしなくても結構です。

でも、なんだかんだ言いつつ、ヒマがあるとすぐに俺のそばに
ツカツカと寄ってきてアレコレ話を始める。
こっちとしては結構疲れるんだけど、これはこれで新人の俺のこと
を気遣っているのかもしれないな、とも思う。
話は徹底的に面白くないけれど。

「昔高校生のころけったいなおかまがおってな。
そいつ若いのが好きなおかまでな。
クラブ終わったあとそこに行っては、みんな並んでは
そいつにチンコしゃぶってもらってたんや。
俺らのクラスだけで行列できてたんやでw」
その話は、少し面白い。
「場所は?」
「○○」
おお。そこはかの有名な発展場ではないですかw

このハゼゴン今でも行ってるんじゃねぇだろうなw
会うと嫌だから近寄らないようにしようと思った。

「オカマはな、意外と自分ら(ハゼゴンは俺のことを指すときによく複数形にする)
みたいなタイプが好みなんやで」
「と、言いますと?デブ好きが多いということでしょうか?」
「デブっていうか、がっちりとしたタイプが好きなんや」
俺ってガッチリしてますか?(爆笑)
ま、これに関しては意外といいセンいってる見解ではある。
俺はまったくもてないという現実は残るのだけれど。

03

22

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マイナス600円

友達と飯食ってきました。

前日、彼は偏食家だったと約束をしてからハタと考えた。
何食わせたら満足するんだろう?
彼からのメールには「美味しいもの期待してます」とある。
こちらに丸投げである。

職場で美味しいお店で値段的にリーズナブルなところを
リストアップし、彼が嫌いなものを思い出して削除していく。
こういう努力を彼は知らないのだ。
だから、わざとここに書いてやるのだw

二件ぐらいに絞込み、当日彼に選ばせることにした。
待ち合わせ場所(携帯文化になってしまうと待ち合わせ場所なんて
特に設定がいらない世の中なんですね。)で彼と落ち合い、
彼の車で目的地まで一緒に移動することにした。
ドアを開けると助手席がリクライニングのままになっていたことに
関しては触れないことにする。

道すがら「知らない道を走ると注意力散漫になる」という言葉に
少し恐怖する。俺のつたないナビに彼も恐怖しながらの運転
だったと思うのだけれど。
「生きて帰ることがデートの基本ですよ」と俺。
「そんなのデートに限らないんじゃ」と軽くかわす彼。

目当ての店の近くのパーキングに車を停めて、
歩いて目的の店に向かうことにした。
俺が選んだ美味しいお店は距離がそう離れていない場所にある。
どちらを選んでもいいように考えたのだ。
実は俺の家の近所でもあるのだけれど。

彼の希望でお好み焼き屋に入ることにした。
店はそこそこ繁盛しておりちょうど一席だけあいていた。
タイミング的にはラッキーだった。
二人でメニューをにらみ合いながらああでもない、こうでもないと
選び倒し、お好み焼きと焼きそばと、枝豆と鶏のセセリの塩焼き、
トンペイ焼きを注文する。
結構な量だったがしゃべりながら食べているとあっという間に
ペロリと平らげてしまった。
俺のほうが少し食べた気がする。
体重がまた増えたかもしれない。
あ、俺体重が100キロオーバーから95キロに落ちたんですよ!
目標は85まで落とそうと思ってるのですが、こう食ってちゃなかなかなぁ。
彼にその体重が落ちた話をしてみたのですが
「他人が痩せた話って面白くないですよ」とまたかわされてしまった。
にべもない。
こいつは俺のことが嫌いなのだろうかw

さんざん食い終わった後に、「あ、料理の写メ撮っとけばよかったですね」と
言い出した。なんで?と聞き返すと「ブログに載せるのに」と答えた。
ブログやってると、どうしてもそういうこと考えちゃうんだよな。
わかる気もしたけれど、もう2人で食っちゃったし、もう1回注文するほど
財力も食欲もないわけで、我慢してもらうことにした。
「食べ終わった鉄板でも撮れば?」とすすめてみたのだが
予想通りその案は採用されなかった。

散々食ったけれどデザートも別腹的に注文してみた。
俺は桜のシャーベットとわらびもち、彼は苺のプリン。
運ばれてきた俺の器を見て「俺そういうのも駄目なんですよね」と言い出す。
「和テイストは苦手でして」
「君はそういうことばっかり言ってると本当に俺の嫁にはなれないぞ」
と言ってやる。
「いやいやだから行きませんってば」と又返される。
おおむね食事には満足してもらったみたいで、なんとか彼の期待には
応えられたようだとほっと胸をなでおろす。

帰りの駐車場で先客のアベックが備え付けの電話で何かを話していた。
話していたのは女のほうで、男は所在なさげにその横で突っ立っていた。
何かのトラブルだったのだろうか?
「結構かわいくないですか?」と彼がうれしそうにささやく。
もちろん電話している彼女ではなく、その横の
韓国の映画スターをぽちゃっとさせたような顔をした男のことだった。
ま、俺的にはいけんこともないけど、積極的にはいかないタイプかな。
かわいい男見るとすぐに反応するのは、どこのホモでも同じらしい。
少し、彼はその見境がない傾向にあるような気もするのだけれど。
それは彼の問題であって、俺には関係ない。

カップルが車で出て行った後、駐車料金を投入するのだが、
コインを全然受け付けてくれない。
これのせいでさっきのカップルは苦情を言ってたのかな?
何度か彼がトライするがコインはすべて返却口に返されてしまう。
ためしに、俺が1000円札を投入してみると、車止めは戻ったのだが
お釣りがでてこなかった。
やれやれ。
先ほどのカップルと同じように管理会社に電話する羽目になった。
何度かの電話でのやり取りをしなくてはならなかったので
少しイラついたりした。
ま、連絡を待ってる間、彼とずっとくだらない話をしていたので
それはそれで楽しかったのだけれど。

マイナス600円は後日自宅に郵送されることで決着した。
管理会社の電話の中で俺の名前を説明するのに、
ある俳優の名前を出したら、それを聞いて彼がウケていた。
だって管理会社の人、俺の名前なかなかわかってくれないんだもん。

ま、楽しかったのでまたあそびにいきましょう、KO2君

03

21

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話を聞く女

今日帰宅途中に家の近所の交差点角にある銀行の前で
A3ぐらいのベニヤ板製の看板を出して座っている女性を見かけた。
屋台を出しているでもなく、青森産のりんご売りのような軽トラック
を止めているでもなく、ただ女性は椅子に座って静かに前を
向いているだけである。
占いかな?と思って通り過ぎたのだが、なんだか気になって
渡りかけていた横断歩道の途中でくるり引き返して、
もう一度その女性の前まで引き返してみた。
わりと、気になると調べずにはいられない性質なので、
普段から気になる看板などがあるとじっと見てたり、
引き返して見直したりということをするのだ。

『聞き屋』
と手書きの大きな文字で看板には書いてあった。
下に『あなたの話なんでも聞きます』

第一印象はうさんくさいと思った。
こんなんで金を取るんだろうか?と考えた。
しばらく人の往来を見ながら客が来るのだろうかと眺めていた。
俺も割と暇なのだ。
その交差点は車の量は多いのだが、どちらかというと住宅街なので
近所のスーパーの買い物客ぐらいしかその前を通らず、
その聞き屋の看板に目をくれても、特に反応もなくみな通り過ぎていく。

彼女は看板の文句どおり、話を聞くことを生業としているのであろう。
どれほどの需要があるものなのか、てんでわからない世界なのだが。
俺がじっと見ていた時間(15分ぐらい見ていました)誰も客として
話しかけることはなかった。
その女性は30半ばぐらいだと思うのだがどことなく不思議な印象だった。
客商売特有の雰囲気が致命的に欠けている感じがした。
かといって、占い師のようなオーラも漂っていない。
どちらかというと人を寄せ付けないような雰囲気だと感じた。

何が彼女にかけているのだろうとしばし考えてみる。
そうか、彼女には表情というものが全くないのだ。
ただじっと座っているだけで人を見ているでもなく、
ガラス張りの銀行をじっと見ているだけで動きもしない。
もしかしたらまばたきさえしていないかもしれない。
彼女の周りだけ空気の濃度が違う気がした。
春の日差しの中で色がそこだけ抜け落ちてしまっているような感じが漂う。
正直に言うと、彼女を少し怖いと思ってしまった。

客も来ないので、だんだん興味も薄れてきて、家に帰ろうと思ったとき、
彼女はほんの少しだけ顔を動かして俺を見た。
目が合った。
でも、やはりそこには表情というものが一切なかった。
彼女は俺を見ているはずなのに、俺を透かして後ろの面白くもない
道路をみているだけなんじゃないのかと思うぐらいだった。

家に帰ってからもなんだか気になって、シシマルにも話を
してみたのだが彼は特に関心も持たなかったみたいで一言
「ふうん」で終わってしまった。
夜に友人と飯を食う約束をしていたので、それまで睡眠をとって
おこうと思って(当直明けだったのです)寝ようとしたのだが、
彼女の存在が気になってなかなか寝付けなかった。

物を知らない男なので、先ほどGoogkeで『聞き屋』と検索をしてみたら
若い子達が無料で街角でやっているブログがあったり、
ネットでそれこそ金を取ってやっていたりと、
割とメジャーとまではいかなくても、普通に存在している活動のようだ。

その聞き屋活動家さん達のブログを色々読んで見たのだが、
やたらと人生謳歌的な感じで、それはそれでまぁなんというかw
ゴニョゴニョ。
まぁ、他人のブログの感想は別として、やはりあの女性と比べると、
そこに流れている雰囲気は全く異質なものだと感じた。

話を聞くということは商売なのか?
それともそういう活動だったのか?
そもそも彼女は何を求めているのか?
彼女の表情を奪ってしまったものはいったいなんだったのか?
逆に俺が彼女の話を聞きたいと思ってしまった。
明日は日曜日だけれど、京都は雨のようだ。
あの場所に行っても、おそらく看板は出ていないだろう。
雨のほうが彼女には似合う気もするのだけれど。

03

19

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ゲイの友達ができました。

先ほどのエントリーでコミュニケーションが下手糞だと
愚痴っていたけれど、ま、それは職場というか社会生活での話。
友人とならばそれなりに話すし、恋人だったら四六時中
くだらない話をしている。
そういう人たちは俺を無口で大人しいとは評しないと思う。
(KO2君どうでしたか?)

さて、驚くことに俺にもゲイの友達ができましたw
俺より少し年上の人だけど、なんだかとっても気が合います。
今までに3回ほど会って話しをしたんだけど、その度に
長話になり5時間6時間はあっという間に過ぎ去ってしまいます。
お互いに中島みゆきのファンだということもあり、その話や、
今までの恋愛のこと、悩み事、過去の失敗話、お互いの性癖
なんかを開けっぴろげにさらけだせて、なんというか、これは
すごいと思ってしまいました。
もちろん一番の親友(兼恋人)はシシマルでして、そこに揺らぎはないのですが、
それでもシシマルとは話せない話というものもあるんですよ。
互いの恋愛話は当事者同士ですから、話なんかできない。
ま、このブログにはその断片とかを書くことによって、
みなさんに聞いてもらうことで発散できていた面もあります。
でも、このブログって奴は発信するだけで小気味いい
レスポンスは期待できないじゃないですか?
もちろん、コメントをしてくださるかたもいらっしゃいますし、
それはそれでとても大事な宝物なのは事実ではありますけれど。

そういう心の機微なんかを話ても、彼はちゃんと真剣に聞いてくれて、
わからないところは質問という形で帰ってきて、その質問に答えていくうちに
自分でも驚くような思いに気付かされたりして、そういうことがすっごく楽しいのです。
ノンケの友達には、例えばシシマルのことを相談するにしても、性別を変えて
話すことぐらいしかできず、それは仮設定に仮設定を重ねた、なんとも
脆いものにしかならず、こちらとしてもあまり有益に思えなかった部分があった。
そうか、ゲイの友達同士ってこんなに楽なんだと、いまさらながら気付かされました。

でも、よく考えたら俺、彼の氏素性を知らないんだよねw
いや、下の名前や携帯番号やメールアドレスは聞いたんだけれど。
アドレス交換するときに「名前は?」と聞かれて「○○です」と答えると
「この世界で名前聞かれて苗字を答えたのってお前ぐらいやでw」と
爆笑されてしまった。
そうか、そういえばどこかのスナックでもそんなこと言われた覚えがあるわw
でも、俺自分の名前があまり好きじゃないんだよ。
なんだか名前負けしてるような、いたたまれない気分になるので。

お互いアラフォー(いやん、こんな言葉使うの)なので、それなりに人生も
過ぎ去ったわけでして、、同じような焦りや不安を抱えている。
互いに冗談でそれを補うのだけれど、冗談こそがなおさら本音を伝え合って
しまうこともあり、そういうことが分かってしまう互いの思いってのは本当に
楽にさせてくれるし、いい人だなと思わせてくれる。

ただ、彼が時々覗かせる自信過剰なモテ話を聴くことは少しムカってくる。

「あの子かわいいよね」
「あ、あれはこっちの人だよ」
「そうなん?なんで分かるの?」
「分かるっていうか、知ってる子やもん」
「そうなんだ、どういう人がタイプなんだろう。俺みたいなんでもOKやろか?」
「多分、無理やと思う」
「なんで?デブ専じゃないってこと?」
「彼はオレ専やもん。オレのことが好きなんやって」
「ぬかせw知ってるっていうか既に食ってるってことやんけw」

へん、お前なんかろくでもない恋に落ちて俺みたいに醜態さらせばいいんだと
心の中で(本当は口に出して)言い返したけれど。
互いに仕事があってなかなか会えないけれど、また会って馬鹿話をしたい。


03

19

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社会化

社会化(しゃかいか)とは、社会学の用語で、子供や、その社会の新規参入者が、
その社会の文化、特に価値と規範を身に付けることを指す。
遺伝子により先天的に獲得されたものではなく、学習により後天的に獲得されるものである。

と、ありますように俺のような落伍者は学習して学び取っていかなくては
なかなか社会化できないのでございます。


新部署に配属されまして、結構疲れきっております。
何よりきついのは俺たち数名がその部署に新たに入ることにより、
その部署で今まで働いていた方(年配の方が多い)を
追い出すことになるというつらい現実なのでございます。
で、3月末までに仕事の引継ぎを行い、4月からは新体制で
望むというスケジューリングなのですが、これが予想以上にしんどい。
2ヶ月ほどしか働いていないペーペー(先輩方もいるけれど)に、
自分たちが築き上げていた職場を奪われることをヨシとしない方々が
いらっしゃるわけでして、それを露骨に口に出す人もいれば、
態度でそれを示すかたも少なくはない。
「時代がそうなってるんやから仕方ないことやなぁ」と快く言ってくださる
人もいるけれど(内心はどうか知らないけれど)、
その敵意の中で仕事をやっていくのってかなり疲弊する。

今一度、人間関係の仕切りなおしを図らねばならない。
前にも書いたけれど、俺は今まで面倒な人間関係を避ける傾向にあり、
どちらかというと偏狭で、ひきこもり的な性質だ。
自分でもわかっている。
その性格を直そうともがいている最中だ。
以前の部署よりも攻略難易度があがった。
年配で偏屈でこちらにやや敵意を抱いている人たちの中でも
やり遂げなくてはならない。

最近、喫茶店や電車の中で話す人たちの会話の流れをよく聞くようになった。
今までも他人の会話を聞くことは好きだったけれど、
ここ数ヶ月は自分でその会話に加わるとするならば
どう反応するか?どういう話し方で応じるか?
話し手が本当に伝えたいことは何なのか?とかを
シュミレーションをしながら耳をそばだてている。
たいていくだらない話が多いし、あまり表現がうまくないなとか
思ったりもするけれど、それでも俺よりはマシだ。

新しい仕事を覚えるなんてどうでもいいと生意気にも思っている。
そんなもん後でどうにでもなる。
俺は自分でも驚くぐらい、この仕事に向いているようだ。
それよりも、人間関係。
話すこと。聞くこと。
そこに意識を集中する。
くだらない話もある。愚痴もある。自慢話もある。
それを引き出してあげて、こちらも受け止めて、俺も少し自分をさらけ出す。
普通の人ならできるであろうこの作業が、俺にとっては苦痛を伴うぐらい
大変なことなのだ。

シシマルに言わせると「あんたは少し気を使いすぎなんじゃないの?」
と軽くいなされるけれど。

03

13

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ほっぺにキス

思ってもいなかったことだけど、人事異動で
別部署への配属が決まった。
たった一月半で異動かよw
やっと同僚たちと馴染んだところなのに・・・。
マツダイラさんとも、もうすぐお別れだと思うと寂しさもひとしおである。

実は社員の日々の仕事振りを極秘に調査する
機関というものがうちの職場にはありまして、
いつのまにか俺も調査されていたらしく、
その結果を踏まえての人事発令らしい。
こんなことなら昼行灯でやり過ごすべきだった・・・とも
思うのだけれど、ま、評価されたことは素直に喜ぶべきなのかも
しれない。
給料は変わらないんだけどw
明後日の夜勤明けにマツダイラさんたちが送別会を開いてくれることになった。
短い付き合いなのに、そんなことまでしていただけるなんて
なんだか恐縮至極である。
こんな生意気な中年デブをかわいがっていただいて本当に感謝。
でも、と言うことは、みんな朝から飲み会するのねw
タフだなぁ。俺寝ちゃいそうだよw


昨夜。
マツダイラさんとの当直勤務だったので、仕事終わりに二人で
いろいろと話していたときのこと。
第一印象から気づいてはいたのだけれど、マツダイラさんは
とっても頭がキレる男である。
話していて飽きるということがない。
そのくせ、オーバーにおどけてみせる仕草が少年ぽくって
どうしてどうして、そんなj彼をどんどん好きになってしまうのである。
俺は最近すぐに惚れてしまう癖があるような気がするなぁ。

深夜も2時になろうとするころ、突然マツダイラさんのスタミナがきれた。
「某君、俺なんか眠たいからちょっとだけ寝るわ」
「じゃ、もう部屋に入って仮眠とりましょうよ」
「いや、少しだけ寝たらパワー全快で某君の相手をするから
10分だけ寝かせて」
そう言って休憩室のテーブルの上に突っ伏したと思いきや、
本当にそのまますぐにいびきをかき始めた。
俺も、寝つきはいいほうだけどここまで「1、2の、3!」で寝てしまう男
を見るのは初めてである。
寝つきの良さ選手権の順位としては、のび太 マツダイラ よれ某となっているようだ。

しかし、10分たっても20分たっても一向に起きる気配がない。
俺もだんだん眠たくなってきたので、マツダイラさんを起こして
仮眠室で寝ようと声をかけるのだが、「ううん」と言うばかりで起きてくれない。
困った。どうしてくれよう。
ちょっと、イタズラしてやれと思った。
結構冗談が通じる相手なので、少しぐらいの悪ふざけも流してくれるだろう。
寝ている彼の眼鏡をゆっくりとはずして、彼のほっぺにチュってキスしてみた。
少し脂ぎってるけれど、耳の後ろから漂う彼の体臭が俺の鼻腔をくすぐる。
さらに追い討ちで「お兄ちゃま朝ですよ」と猫なで声でささやいてみた。

ガバッと起きた。
あまりに突然の動きに避ける暇もなく、彼の後頭部が俺の鼻を容赦なく打ちのめす。
「お前なぁ。今俺になんかしたやろ!」
そう言って笑いながら俺をの頭を腋に抱えて揺さぶり始める。
俺も笑いながら「ギブギブ」といって、されるがままにしておいた。
しかし、一夜明けて考えると、大胆なことやったよなぁ。
24時間勤務だから、夜中になるとなんかテンションが変になってしまうんだよなぁ。
俺がヨコシマな欲望を抱いてるなんて知ったら、こうはならないだろうな。
とってもとっても幸せな一夜でした。





03

10

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一生届かない愛

この部署に勤め始めて一月半。
この男だらけの職場は本当に男子校なのだということがわかってきた。
俺は共学だったので、本当の男子校の雰囲気は知らないのだけれど
まぁ、感覚としてそう思うのだ。
ちょっと気を許すとすぐにエロ話がはじまる。
なんだかなぁ。
俺の大好きなマツダイラ君はそういう話には積極的に入ってこない。
女に興味がなさそうだから、もしかしてこっちの人かしらと思っていたら、
本人のカミングアウトにより、重度のロリコンだということが発覚した。

「ええと、ロリコンってどの程度なのでしょうか?」と恐る恐るたずねると、
「小学生低学年以下じゃないと、萌えない程度にはロリコンっすよ」

そうか。
彼と俺との間には性別の前に年齢制限という壁があったのか。

「でもね、マツダイラさん。ロリコンの人に一度聞きたかったのですが、
小学生が好きだとしても、彼女たちはいずれ大きくなって中学生、高校生
になっていくわけですよね。そうすると彼女とあなたの間には永遠という
言葉が当てはまらなくなるわけじゃないですか。愛が期限つきなわけじゃない?
そういうのってどうなの?」
「だからこそその限られた時間の中で精一杯、愛を注ぐわけですよ。
見返りも求めずに必死にね。そして立派なレディに育て上げて涙の別れ
をするわけですよ。光源氏光源氏」
「はぁ。そうなんですか。でもそれだと、相手見つけるの大変ですね」
「ロリコンは孤独との戦いですよ」
そうなんだ。
大変なんだなぁ。

「もしかしたらマツダイラさんは、ロリコン人生をこのまま貫くとするならば
一生童貞のままじゃないんですかね」
「もしかしたらそうかもしれないね」
「それでも、かまわないんですか?」
「かまうもかまわないも仕方がないことなんだよ。
無理やりに苺ちゃんたちを組み敷くこともできないしね。
そんな行為は本意じゃないんだよ。
かなわないだろうけど、苺ちゃんのほうから俺に振り向くのを待つしかないんだ。
そして彼女が俺を愛してくれたとしても、法律の前には手を出すことも許されないんだ。
だから、俺の愛は一生誰にも捧げられないという現実があるんだよ。
それって悲しいことだろう?でも、どうしようもないんだよ」
「そうなんですか」

ロリコンの人って本当に大変なんだなぁと思った。
それに比べればホモなんていう生き方は楽すぎるよなぁ。
あくまでも比較の問題としてね。
俺も、若干ショタ好きだけれど、かといっておじさんも嫌いじゃないし、
青年も中年もなんでもおいしくいただく。
本当にダレ専であることはよかったなぁと思うわけですよ。


03

08

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羊の毛刈り。スポーツジム。ラブドール。もてない男。

http://www.rokkosan.net/event/spring12th.html
昔から一度はやってみたいと思っていたこと。
羊の毛が刈りたい。
羊をちょこんと抱っこして、バリカンでおもむろにジョキジョキと
刈り込んでいく。
あれがやりたい。
今日、たまたまチラシを見つけたので、休みの日にでも行こうかと
思っているのですよ。
シシマルも誘っていこうかとも思ったのだけれど、この時期彼は
花粉症であまり外に出たがらないのだ。
誰か一緒にいきません?
牧場で俺と健康的に牧歌的に羊毛刈をしたい方、ぜひ応募してください。
いやいやもうあんなことにはならないと思うから大丈夫ですよw
(あんなことってのは、あのことですw)

******************************************************

同僚にジムに一緒に行こうと誘われている。
会社の近くにあるジムが安い割には設備がいいという評判なので、
会社の帰りにでも一緒に行きましょうよと。
ジムか。
行ってみたいとは実は少し思っていた。
ただなんだかあまりにもゲイちっくな気がするのと、俺なんかが行って
大丈夫なのか?という不安から行くのを躊躇していた。
やせなきゃいけないと言うのも目的のひとつだが、
最近筋力がグンと落ちてきたので、もう体がダルダルなのだ。
もう、どこ触ってもブヨンブヨンのダルダル。
発展場に行こうもんなら速攻で入場停止をくらうような気がする。
(ま、その手のマニアには受けるかも知れんけど、
その割には顔がデブ顔じゃないからなぁ)
発展場に行く予定も(多分)ないのだけれど。
そういえば、数ヶ月前には減量して、モテモテボディになると
息巻いていたのにあの誓いはどこにいったのだろう。
楽して、モテモテボディになる方法はないのだろうか?

*********************************************************

「モテモテボディになって、彼女作りたいんです」
その同僚は前職で、柔道をやっていたらしく、あの有名選手と
一緒に合宿なんかも行っていたらしい。
まっことうらやましい。
「柔道やめてから、腹も出てきたし、最悪ですわ。
かわいい彼女が欲しいっすね。某さん、一緒にジム行きましょうよ。
俺、もうシコシコすんの飽きたんですわ」
そういいながら右手でシコシコと動かしておどけている。
そりゃ、これじゃ女にもてないよなぁと思う。

「ラブドール買おうかと思ってるんすけど、どうすかね?」
「ラブドール?何それ」

検索してみた。
http://www.orient-doll.com/top.html
どうやら、精巧にできたダッチワイフのようだ。
どんどん調べこんでいくと、その手の愛好家の投稿ページがあり、
その手の風俗があり、なんだかとっても深い世界のようだ。

「お前は彼女が欲しいんじゃないの?やれれば何でもいいの?」
「やりたいから、やれる彼女が欲しいんすわ。みんなそんなもんでしょ」
「・・・そんなもんかな」
再度、こいつは絶対にもてないと思ったw
「彼女いたら乳揉み放題なんでしょ。あこがれますわ。
俺、自分が女やったら絶対毎日自分の乳揉みまくりますわ。
それにしても、何で俺には女よって来ないんでしょうね?」
「さぁ、なんでだろうね」

男子校のノリだわな。やれやれ。

03

07

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父親~後編~

「こんなとこまで来て、あなたは何をしているんですか?」とこちらから声をかけた。
呼び止められるぐらいなら俺から先制をかけようと思った。

とりあえず話があるなら聞くから場所を変えようと言って、
御所のベンチまで誘導した。
「ママの居所教えてくれや。頼むわ。もう反省してこれからはちゃんと
働くし、絶対に暴れたりせぇへんし。な、某は知ってるんやろ?
後生やから頼むわ」
「知りません。迷惑ですから帰ってください。」
「知らんはずないやろ。あいつがお前に黙って消えるはずないんや。」
「知らないものは知らないとしか答えられませんよ。
それに何ですか?ちゃんと働く?ご冗談でしょう。
50過ぎて何の職歴もないあなたにどんな仕事ができるって言うんですか?」
「今の事務所でなんとかなるように話もしてるし、たのもしかて次にはまとめて
回ってくるようになってるし」
「たのもしってwあれは仕事じゃないでしょw事務所ってまだヤクザは
お続けになるのですかw笑わせないでください。」
「人がトップを目指すのはいろんな道があるんや、学生風情のお前に何がわかんねん」
「それじゃ、せいぜい精進してトップを目指してくださいな。」
「人がおとなししてると思って調子乗り腐りやがって。お前、誰に口きいとるんや。
仮にもわしは親やぞ」
「だから仮だったのでしょうがw」
「ワシはワシなりに、お前が本当の子供やと思って育ててきたつもりや」
「くだらない思い出の美化はやめてくださいよw
確かにある種の貴重な経験はさせていただきました。
でも、俺はあなたをきっと許さないと思います。
子供にとって貴重な何かをあなたはことごとく奪っていったんです。
そんなに連れ子が憎かったのですか?
思うようにいかない人生のはけ口が必要だったのですか?
知ったことじゃない。あなたが選んだんでしょうが。
子供は何も選べないんです。
嫌でも学校が終われば家に帰るしかないんです。
安らぎを覚える時間が子供にとってどれほど大切なものか。
今でも夢に見ます。あなたがふすまをわざと大きな音であけて
夜中に大声で『寝たんか、このくそガキ』と言ってわざと足を踏んで起こしておいて
『何、いつまでも起きてんねん。早く寝ろって言ってるやろ』と殴り、
5分おきごとにそれを繰り返して俺を寝れないようにしたこと。
あれがしつけですか?それも毎晩毎晩。
おかげで学校で寝てしまうような小学校生活でしたよ。」
「そんなんした覚えはない。ただ男の子やから多少厳しくした面もある。」
「もう、いいです。いまさら時間は戻らないし。
いいですか、ある種の物事は取り返しがつかないんです。
あなたがいくら反省しても、頭を下げても、戻らないものは戻らないんです。
そういうことを俺は学んだし、あなたも学んでいいころだと思います。
一人で生きていきなさい。もう、これ以上俺たちにかまわないでください。」
「いい加減にせんと、お前の人生メチャメチャにしたるど。学校はわかってるんや。」
「好きにすればいいでしょう」
「・・・・・・・その目や」
「はい?」
「お前はいつもワシをそういう目でみるんや。
ガキのころからずっとそうや。お前のほうがヤクザな目じゃ。」
そう言い捨てて、ベンチから立ち上がると振り返りもせずにどこかへ消えていった。

思えばそれは出会ってから、ソイツと話した一番長い会話だった。
俺は残酷なくらい冷たい話し方を通しぬいた。
声を荒げることもなく、泣きをいれるでもなく。
できることなら、もう2度とこんな冷たい自分にはなりたくないと思った。
もう一生ソイツには会いたくないと願った。


それから数年後、母が逝った。
病院で小さくなって息を引き取った。
美人だった面影もなくなり、俺の手を力なく握り締めたままひっそりと。
あまりにも短い生涯だった。
俺が喪主を務めた。シシマルに受付を頼んだ。
そばにいて欲しかったから俺が無理なお願いをした。

葬儀も法要も終えた後、俺はシシマルの手を握りながら
横にいてくれとお願いをして一本の電話をかけた。
「お久しぶりです。某です」
「お、なんや久しぶりやな。元気にしてるか。」
「おかげさまで。先ほど、母の法要を済ませました」
「え!死んだんか。嘘やろ、あいつ死んだんか。
法要ってどうゆうことやねん。いつ死んだんや」
「7月26日に。それだけをお伝えしたくて。
葬儀も何もかもすべて終えてから話したかったんです」
「なんで連絡してくれへんねん。」
「あなたに来て欲しくなかったから。
お別れは俺たちだけでやりたかった。
あなたになんか葬儀で涙を流させたくなかった。
葬儀の席で「ごめん」なんて甘っちょろいこと言わせたくなかった。」
「なんや、それ」
「おそらくこの電話は俺があなたと話す最後になると思います。
あなたが、もし、少しでも母を大事に思っていたというなら、
今後一切俺たち兄弟の前に姿を見せないでください。」
「なんでそんなつらいことばかりワシに言うんや。お前らの親やないか」
「親だと言うのなら、妹たちが大事だと思うなら、なお更お願いします。」
「線香だけでも、あげに行かしてくれや、どこにいけばいいんや」
「ごめんなさい。それもお断りします。」
「なら、なんで知らせたんや。葬式も出れへん、線香もあげられへん。
わざわざこんな電話せんでもよかったやろうが。」
「いいですか、俺にだって感情があります。
わかりますか。俺 に だ っ て 感 情 が あ る ん で す。
母がこんなに早く逝ってしまった無念さもあります。
俺たち兄弟にとって大事な人だったのに。
妹のお腹には赤ちゃんもいるんです。
それを楽しみにしていたのに顔も見ることもできなかったんです。
今日ぐらい、あなたにそれをぶつけてもバチはあたらないでしょう。
親だと言うなら、それほど親だと言いたいのなら、
まずは俺たちにかける言葉が他にあるでしょうが。」

返事も聞かずに受話器を置いた。
そのまま俺は泣き崩れた。
俺の肩にそっと手を置いて、シシマルも一緒に泣いてくれた。
泣いても泣いても、涙が止まらなかった。
「こんなことして、ごめんな。嫌な俺やったやろ」とシシマルに詫びた。
シシマルは首を横に振りながら、そんなことないと言って笑もうとしてくれた。
俺も真似して、笑もうとしたけれどあまり上手くいかなかった。
「笑わんでもいい。今はいっぱい泣きな。お母ちゃんと自分のために」

それ以来、ソイツとは話をしていない。
今も生きているのか、死んでいるのか、
どこに住んでて何をしているのかまるで知らない。

今後2度と、父親について語ることもないし、ここに書くこともないと思う。
でも、一度だけ語りたいと思ったのです。
いろんな思いを昇華したいと願いました。
それが叶ったのかどうか自信はありません。
きっと時間がかかる類の事柄のような気もします。
長丁場におつきあいいただきまして、本当にありがとうございます。











03

07

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父親~中篇その2~

大学に入ると同時に家を出ることにした。

母に思いのたけをすべて話した。
子供のころからのことから、今になって家を出るという自分の考えまで。
母はポロポロと涙を流し、そのまま表情をなくしてしまった。
俺の腕を痛いぐらいに握り締め、何度も何度も頭を下げて
言葉もないまま泣き崩れてしまった。
「違うんだ、僕がいなければ、ちゃんとした家族になるじゃない。
別に家をでたまま会いにこないわけでもないし。
大学の学費も少しはお世話にならなきゃいけないしねw」
「某がいない家なんて何の意味もないやないの」
そう言ってまた泣き崩れてしまった。
でも、決意は固かった。
当時付き合っていた大輔さんからの援助もあって
バイトを2つ掛け持ちしながらも、なんとか
暮らしていくことができる算段をつけた。
兄弟を置いていく形になったことに、心は痛んだけれど。
それは本当に本当に辛いことだった。

しかし、事態は俺が思っていたように回転しなかった。
俺が家を出た数ヵ月後に、母は離婚し、家をでてしまった。
家には残った兄弟とソイツだけの生活になってしまったのだ。
10数年後、当時を振り返って妹は俺にこういった。

「ママにとってお兄ちゃんは特別だったんだよ。
私たちも十分に愛されていたけれど、お兄ちゃんへの愛情は本当に特別だった。
だからお兄ちゃんが家をでてしまったことで、ママの神経はプツンって
切れちゃったんだと思う。
無論、数ヶ月後には私たちをちゃんと迎えに来るって約束してたし、
実際に形はどうあれママは迎えにきたけれど。
でも、誤解しないで。お兄ちゃんを責めてるんじゃないの。
そこまでひどいいじめを受けていることなんて知らなかったし、
家をでてしまいたくなる気持ちもわかる。
お兄ちゃんがいなくなったことでものすごくさびしかったのは本音だけど、
全然うらんでもいない。
むしろ、家を出てからのお兄ちゃんの行動にものすごく感謝してる。
でもね、ただ事実として、そう思うの。
お兄ちゃんがいなくなってしまったことで、すべてが変わったんだって」

母が家を出てしまったことに愕然とした。
妹たちを置いてでてしまうなんて想像の範囲外だった。
母は家を出たその足で、俺のアパートに立ち寄った。
「あなたがそこまでの虐待を受けていたことに気づけなかった。
アイツと上手くはいってなさそうだとは思っていたけれど、
店を軌道に乗せて生活を守るのに必死だった。
あんたは私の前でいい子でいすぎた。私はそこに甘えすぎた。
許せないの、自分が。」
離婚はいいとして、妹たちを置いてきてしまったことに異議を唱える。
「あの店ではもうだめ。アイツがいりびたるから。
新しく違う場所で店を開いて、ちゃんとした家を借りて迎えにいくつもり。
でもね、某、最後のお願い聞いて。あの子ら時々見に行ってあげて。
私はアイツの顔をもう2度と見たくないの。もうだめなの。
あたしの大事なものを壊していたなんて、どうあっても許せないの。」

母の頼みだけではなく、妹たちが心配なので、実家に帰り
晩飯を作ったり、宿題をみたりしてあげると約束をした。

当時彼氏だった大輔さんは断固反対した。
「お前が親に振り回されとるんやないか。
いいか、俺はお前の幸せしか守ることはできひんのやで。
家を出るって事にかんしては、俺も賛成したし、できるか限りの援助もしてやる。
でも、せっかくお前ががんばってるのに、家に戻って子供らの世話してって
そんな話はあんまりやないか。
親が解決するべき話をみんなお前にケツもっていってるだけや。
ええか。お前が妹やお母ちゃんを大事に思う気持ちもわかる。
それがお前の優しいとこやし、そういうお前を好きになった。
でもな、心を鬼にしなあかん場面ってあるんやで。
お前がソイツの代わりに飯作って、あの糞親父がありがとうっていうと思うか?
どうせ、あぐらかいてるにきまってるやないか。
なんでお前だけそんなに苦労せなあかんねん。」
そう言って俺のために泣いてくれた。

学校が終わると急いで家に帰り、買い物をし、実家に戻り、食事の支度や洗濯をし、
夜のバイトに間に合うようにまた走るという繰り返しの日々が続いた。
友達たちと一緒に入ったサークルも抜けることにした。
そんなことやってる時間がない。
妹たちはまだ小学生だった。
家に帰ってカップラーメンで晩飯を済ますようなせつない思いをさせたくはなかった。

アイツとの対立が再び始まるのかと少し身構えた。
だが、数ヶ月ぶりにみる、アイツは少し変わってしまっていた。
以前のような威圧的な態度を俺にとることはなかった。
一気に年をとってしまったように、目に見えてやつれてしまっていた。
俺に対し、おどおどとした態度をとるようになった。
時には、俺が実家に帰るタイミングを見計らって外出するようになった。
拍子抜けした感じもあったが、まぁもめるよりは勿論全然マシな展開だ。

そして母は約束どおり絶妙なタイミングで店を軌道に乗せ、家を用意し
半日で荷造りをして、妹たちを引き取ることに成功した。
アイツに見つからないように、風の速さで。
たった一人残されたアイツがどうなろうと知ったことではなかった。

ある日。
大学の門の前にアイツが現れた。
趣味の悪いシャツの上に薄汚れたスーツを着ていた。
俺が下校する時間なんてわかるはずもないだろうに、ずっと待っていたのだろうか?
身構えた。母親の居所を聞き出すためにやってきたのだと思った。
再び対決の場面だと思った。

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06

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父親~中篇~

体が震えた。
人を一人殺めようと思うなんて正気か?

そのころ、ソイツからの俺への暴力は減っていたが
反比例して母への暴力が増えていった。
おそらく男としてのプライドが保てなくなってきたのだろう。
チンピラ風情の収入など、母の商売の才覚の前にはカスのようなものだった。
そのうち、母に嫉妬するようになった。
店の客と寝てるんじゃないのかと疑うようになった。
自分のことを店の酒のツマミに
して笑ってるんじゃないのかと考えるようになった。
小さい男だ。
母が出勤した後、2時間後ぐらいに車で店に突然のりつけては、
客にからみ、母にからみ、店をめちゃくちゃにし、夜中に二人帰っては
殴り合いの喧嘩をはじめ、近所に響くぐらいの罵声が飛び交うようになっていた。

終わらせようと思った。
もうたくさんだ。
こんな馬鹿な男にすべてを台無しにされてたまるものか。
もう一度ピストルを握りなおした。汗ばんだ手ではうまくつかめない。
落ち着こうと思い、台所で水を何度も飲む。
鼓動がドンドンと速く大きくなっていく。
その日、そいつは弱い酒をかっくらって居間でいびきをかいて寝ていた。
母が仕事から帰ってくる前に終えなければならないと思った。
深夜0時を回ったところだ。
あまり時間の猶予はない。

しかし、いざとなるとソイツに近づくのが怖かった。
間近で人が死ぬのを見ることに耐えられるか自信がなかった。
でも、やらねばならない。と思い返す。足が震える。
このままではコイツのためにすべてが損なわれてしまう。
血は流されねばならないと思った。

その時、2階で叫び声に近い泣き声がした。
サイレンのように鋭い響きだ。
幼稚園にあがったばかりの妹の声だった。

あわてて2階にあがり、妹の様子を見に行く。
すると布団の上でばたばたと走り回りながらなワンワンと
声をあげて泣いている姿が目に飛び込んできた。
夜中に妹のそんな姿を見るのは初めての事だった。
「どうしたん?いつもは朝までぐっすり寝るのに。なんかしんどいんか?おしっこ?」
と妹に話しかけるのだが、かぶりを振って泣きじゃくり、
抱きついてくるばかりで一向に要領をえない。
アイツがこの声で起きることは面白くない。
妹を抱きかかえ毛布を肩からかぶせてあげて外に出ることにした。

ようやく妹が話し出す。
「あんな、お兄ちゃんがないなくなるねん。あたしたちな、兄弟の前からお兄ちゃん
だけ消えてしまったん。ママも知らんっていうしパパも知らんっていうし。
エレクトーンのお迎えにもきてくれへんし、呼んでもどこにもいいひんねん。
お兄ちゃんがいいひんと嫌やのに」
そう一気にまくし立てた後、また泣き始め、しゃくりあげてはぎゅうっと俺の背中を
痛いぐらいにつかんで離そうとしなかった。

怖い夢を見たんだ。
背中をなぜながら安心させようとした。
それは夢であって現実じゃないんだと何度もやさしく話す。
「大丈夫、俺ここにいるやん。どこにも行ってへんやろ?
夢を見ただけやから大丈夫。泣かんでもええんやって。」
寝ぼけていた頭が少しづつ現実へとシフトしてきたようで、しゃっくりは
なかなかとまらなかったが安心したのか、様子は落ち着いてきた。
そしてそのまま妹と二人で夜の公園へと一緒に散歩して
二人でブランコにのったりしながら気分を落ち着かせた。
俺のズボンのポケットにはピストルがはいったまま。

あまり、超常現象じみたことなんか言いたくないんだけど、
それでもそれは本当に起こったことだった。
結果として妹の見た夢が俺を止めたのだ。偶然にしろ、なんにしろ。
そのとき、俺は寝ていた妹に俺の黒い感情が伝染したのだと思った。
神様、と少し口に出していいたくなった。
家に帰り、妹を寝かしつけた後、布巾でピストルについた汗をふき取り
(なぜか、なかなかそれは取れなかった。)
もう一度新聞紙で包み直し、たんすの奥へと戻した。


そうして、俺は高校生になった。
俺が入った高校はどちらかというと裕福な家庭で育った人たちが多い
進学校だった。
なんでよりによってそんな学校に入ってしまったんだろう?

親の職業欄に「自由業」としか書けず、教師から「自由業って具体的に何?」
と訊かれるごとに黙り込むしかなかった。
そのころ俺にはひとつだけ将来の夢として考えていることがあった。
高校を出たらすぐに家を出よう。
それは高校生にとって、とても悲しい夢だった。

この家で邪魔なのは俺なんじゃないのかと考えるようになっていった。
母とソイツと妹たちだけならば、それは血のつながったきちんとした
家族になりえるし、それが自然な形なんだと思った。
クローズドサークル。完全に閉じられた輪のようにきちんとした家庭。
俺という異分子さえいなければいいんじゃないのか?
それはかなりつらい思考の帰結だった。
俺がいなくなれば家族として再生する、そうあってほしい。
母のために、兄弟たちのために。
そして、もちろん俺自身のために。

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04

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父親~前編~

父親についてはあまりここでは書けないというか、
無意識的に書かないようにしていたような気がする。
劣悪な家庭環境のパターンとして(もちろん幸せで円満な
生活を送っていらっしゃる方も少なくないとは思いますが)
父親の不在、もしくは無職の父親の存在というものが
大きな影を落とすことは容易に想像がつくと思う。

俺の本当の父親については以前チラッと書いたこともあるけど
お茶屋を経営しているボンボンだったらしい。
写真でしか見たこともなく(なかなかイケテル恰幅のいい男前でした)
もちろん会ったこともないので語ることが、あまりない。

俺が小学生に入学したとき、ソイツは俺の前にやってきた。
「今日からおじさんではなく父さんと呼べ」と威圧的に言ってきた。
俺の子供時代はソイツとの戦いの日々だったと言っても
決して過言ではないと思う。
ソイツは無職の下っ端のチンピラだった。
俺はその日から今で言う虐待の対象になった。
チンピラやくざでもそこそこのクラスならそれなりの金も入り、
それなりの暮らしもできるのだろうが、
所詮ボンクラのやくざ風情にはたいした金など回ってこない。
仕事というよりも雑用ばかりで、事務所の泊まり番、徹夜の麻雀、
競馬のノミ行為だけが仕事(と呼んでいいのか?)すべてだったんじゃなかろうか?
土曜日は最悪だった。
学校から帰ってくると、遊びに行くことも許されず、
電話の前に座らされて、
「1-4 30、3-6 80、山田さんですね。」という電話番をさせられた。
意味わかります?
小学生の時から、犯罪の片棒を担がされていたのだ。

結局生活のためには、母親が働きに出るしかなくなってくる。
母親は水商売の才能があったらしく、小さなスナックの経営を
はじめ、そこそこの収入を得ることができていたように思う。
夜になると母親は化粧をし、綺麗な服に着替えてタクシーで出勤する。
アイツがいなければ、一人でそれなりに生活するのだが、
いる時には夜は長く、暴力に怯える時間が始まる。

例えば風呂を沸かせと言われる。
昔はガスの元栓が外にあったりして裏庭に出なくてはいけなかった。
俺が外に出たのを見はからって、裏庭の戸口の鍵をかけ俺を締め出す。
玄関から締め出せば人の目もあり、近所の人たちに見つかる恐れも
あるが、裏庭でいくら泣こうが喚こうがそこまで他人は介入してこない。
泣けば泣いたでうるさいと殴られ、黙って戸が開くのをじっと待っていれば
風呂のひとつも満足に沸かせないのかと殴られた。

例えば、夜に車で連れ出され、おもちゃ屋で好きなおもちゃを選べといわれる。
珍しくおもちゃを買ってくれるのかと思い、1つ選ぶ。
1つじゃなくて5つぐらい選んでもいいんだぞと言われ、
タイムボカンの超合金や、人生ゲームなどをさらに選ぶ。
しかし、そのおもちゃは俺の手元には来ない。
昔別れた奥さんの子供へのプレゼントとしてそのまま持っていってしまうのだ。
「なんで、お前みたいな奴に買わなあかんね、あほらしい」という
捨て台詞だけは頂戴したけれど。
子供ながらに、この行為は殴られるよりもきつかった。
選ぶだけ選ばしておいて、それをとりあげるようなことをされれば
本当にどうにかなるぐらい悲しくなってしまう。

競馬ブックを買いに行くのも俺の仕事だった。
普通、小学生に競馬の新聞なんか買いに行かせます?w
ある日、競馬ブックという雑誌(同じ名前で新聞と雑誌があったんですよ)
を買って帰ったら、満足に買い物もできないアホだとののしられ、
ゴルフクラブで背中をなぐられたこともあった。

だんだん家では笑わない子になっていった。
学校や外では明るいいい子だっただろうけど、
家では暴力に萎縮し何も望まない、何も話さない。
あるいは顔色を伺って、この言葉を言っても大丈夫なんだろうか?
このかっぱえびせんを今食べてもなぐられないのだろうか?という
ことばかり考えているようになっていった。
小学2年生になると小児喘息を患うようになった。
風邪を引くと必ず喘息も併発し、呼吸が苦しく、夜中に眠ることもできないよう
になってしまった。
喘息の声がうるさいと殴られ、布団にもぐりこみながら必死で息をしないように
苦労したことも覚えている。

その他、ここには書けないようないろいろなことをされたけれど
それはいつしか、澱のように心の奥底にたまっていき、
そいつへの憎しみばかりが育っていった。

でも小学校高学年になるころに俺は変わった。
怯えて暮らすことにだんだん我慢ができなくなってきたのだ。
なんで、俺がいじめられなくちゃならないんだ?
俺が何をした?
少林寺拳法を習いだした。強くなりたいと思った。
進学塾に通わせてもらった。賢くなりたいと思った。
ソイツは俺が習い事をすることにいい顔はしなかったけれど
母は俺がやりたいと言ったことはなんでもさせてくれた。

中学生になると喘息はぴたっと止まった。
少林寺拳法のおかげで体力がついたからと周りは思っていたようだが
俺はたぶん、強くなることで精神的な作用が働いたからだと自己分析していた。
そして、俺はソイツに反抗するようになった。
ぐれると言うのとは少し違う。
不良になったり、そういう逃避行動にはなぜだか走らなかった。
俺は徹底的に、ソイツと戦うことを選んだ。
「ヒモ風情が偉そうな口きくなや。子供殴る暇あったら千円でも稼いでこいや」
それぐらいは言い返せるようになった。

それでもなんだかやりきれなくなって、ラジオとタバコと文庫本を持って
夜中に公園や河原で一人過ごすことも多かったけれど。

あるとき、たんすの引き出しの奥に新聞紙に包まれたピストルを見つけた。
おいおい、ここまでヤクザにどっぷりはまってるのかよw
驚くよりも呆れた。
チンピラどまりでいてればいいものを。
新聞紙を広げ、中のピストルを取り出してみた。
冷たくて、重たくて、こいつは確かに武器なんだなという説得力があった。
撃ってしまおうかと突然思った。その誘惑はあまりにも魅力的だった。

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シシマルの贈り物

「はい、これ。確か今日から研修が終わって独り立ちするって言ってたから」

そうめんどくさそうに言って小さなトトロの模様が入った巾着袋
を俺に手渡した。
かわいい巾着袋の中には小さな箱が入っていた。

「何?ドングリでも集めてきたの?」
「まさかw誕生日にでもと思ったけれど、ま、早めに渡すのもいいかと思ってね」

プレゼントらしい。
箱の中にはCITIZENの真新しい時計が入っていた。

「この前大丸で新しい時計欲しそうにしてたからね。
お兄ちゃん奮発しちゃったよ。
トトロの袋はお弁当袋。
某は毎日お弁当作って偉いけど、何にも包まないから汁物はこぼれるよ?」

不意をつかれた。
ありがとうと小さな声で言うのがやっとだった。
それ以上言葉を出すと泣きそうだった。
本当はごめんねと言いたかった。
そっけない素振りでいても、俺のことちゃんと見ていてくれたんだ。

「誕生日は、だから何もないからね。家は貧乏なんだから」と、
そういって笑いながら何度も念を押す。
俺は言葉少なく、「うん」といいながらコクリと首を縦に振る。

「腕にはめてみ?調整するから」
そういえばシシマルは腕時計の金具調整キットを
以前東急ハンズで買ってたのを思い出した。
こういう手先器用さが必要な仕事は彼の得意分野だ。
そもそも、この家で俺の得意な守備範囲なんてあるのだろうか?

ややこしい模様の時計のバンドの小さなネジをはずすのに
苦戦しているシシマルに訊いてみる。
「俺はこの家でどんな役割を担っているんだろう?」
水泳選手が思いもしないタイミングで鳴らされたスタートの合図を
聞いたときのような顔になり、小さなドライバを持っている手を止めて俺のほうに向き直る。

「なんだ急に。」
「なんだか、ちょっと気になって」

川の向こう岸から風が吹くようなゆっくりと長いため息をついた後、
シシマルは言った。

「毎度いろいろやらかすし、見ていて危なっかしいし、覚えも悪いし、がさつだし、
能天気だし、本当にこの子はこれで39歳なんだろうかと時々思う、
いや毎日思うけれど。
よくも前の職場で部下がいたもんだと本気で思うよw
それでも、なんだろう?
いてくれないと安心できないってのが本音だね。
例えば別れてしまったとしても、きっと某は大丈夫なんだろうか?
ちゃんと生きてるんだろうかって心配になると思う。
だから手元において、見守ると決めた。
ま、話してる分には厭きないしねw
基本的に馬鹿だけど、頭の回転はそれほど悪くないし、人に優しいところもある。
ま、こいつで我慢しようかなってところだね」

そっか。

ありがとう。

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03

02

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独り立ち記念日

今日からやっと、1人前の社員として認めてもらい
指導員もつかずに、働くことが叶った。
うちの業界用語では「独り立ち」と呼ばれる。

研修後半一番心がけたことは、仕事を覚えるよりも
上司、先輩と打ち解けることだった。
いや、そのことだけに心を砕いていたといっても決して過言ではないと思う。
自分から積極的に話しかけ、おどけたり、くだらない冗談に
笑い、ボケを振りまき、自慢話に感心の声をあげ続けた。
だって文字通り24時間一緒に働くんだもの!
家族と過ごす時間よりも、下手したら長いかもしれない。
互いの垣根を取り除き、自分をできるだけ知ってもらい、
相手のことをできるだけ理解していかないと、
正直しんどい職場だと感じた。
今までの俺のままでは通用しないと判断したのだ。
(休憩時間にひとり離れて文庫本を読んでいるような)
仕事の内容なんて言ってしまえばそれほど難しいものでもない。
(数週間前までヒーヒー言っていたことはこっそりと棚の奥にしまっておく)
「今度飲みに連れて行ってくださいよ、飲めないけど、そういう席は好きなんですよ」
と、かわいくねだってみたりした。
普通の人たちは難なくできることだろうけど、
どちらかと言うと自閉的な生活をしていた俺にとっては革命というべき事態である。
古い誰かの言葉だけれど、本当に自分で自分を誉めてあげたい。

それにしても、その効果は絶大だ。
自分でも驚くぐらい、周りのウケがいい。
知らぬ間にあだ名で呼ばれるようになっていた。
(たとえば苗字が松本だったらまっちゃんと呼ばれるようにね)
本当に上司に飲みに連れて行ってもらい、
先輩がただけ集まりのカラオケの席にも呼ばれ、
来週は所属長の家族同席の鍋パーティーまで誘われた。
「某も一人でメシも侘しいだろうから、家に食いに来いや」
本当に、今までの自分ではない。

苦手な、本当に苦手な分野なのだけれど
人との関わりをちゃんとしようと思ったのだ。
最初に「この人はとは絶対ウマが合わないなぁ」と
言う人が数人はいたけれど少しづつ話していくうちに
それなりの道筋を作って笑いあうこともできるようになってきた。

世間話ができるように、新聞を4紙毎日読むようになった。
驚くことにスポーツ新聞まで読むんだぜ?
この俺がだよ?
野球もサッカーも政治も経済も興味がないではなく、
ある程度には話せるように。
(そういえば俺、大学での専門は新聞学専攻(ジャーナリズム)だったw)

でも時折そんな自分はどこか知らない「向こう側」にいるような
錯覚を覚えるときもある。
もろい仮面をかぶって必死に演技している
向こう側の自分をそっと静かに眺めているもう一人の自分がいるような。
馬鹿が一人、から回りしているような気分にもなってくるのだけれど。




03

02

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ファミリーレストラン

昨夜。
家の近くのファミレスで一人遅めの食事を取った。
少し考え事をしたくなり、シシマルに少し出かけてくると言って
出てきたのだ。
窓辺の席を陣取り、食事もそこそこに、ドリンクバーのコーヒーを
前にして、外の景色を眺め続けた。
持参した文庫本も何度か目を通していたのだが、
何度読んでもそこに展開されている物語の意味が理解できない。
読むのをあきらめることにした。
ページをひらいたまま裏返しにして、食べ残したサラダの白い皿の
横にその文庫本を置いた。
それは少し疲れた体を休めひっそりと横たわっているように見えた。

道路を挟んだ向かい側に古びた10階建てのマンションが目に入る。
1階には青い看板のコンビニがあり、ひっきりなしに人々が出たり入ったり
している。
その上階にある部屋の明かりをゆっくりと数えてみた。
そこにはそれぞれの営みがあるのだなとぼんやりと考えた。
匿名の人々の健全な営みを想像してみたのだが、あまりうまくいかなかった。

もしも、人が平等でないとするならば、俺はどこに属するんだろうか?

辞めていたタバコに火をともし、煙を吐き出す。
タバコ!
こんな行為だけでも、俺はシシマルを欺いているのだ。
まじめに吐き気がする。

実際の話、考えることなんて何もなかった。
あったかもしれないけれど、そのほとんどは考えても仕方がないことであり、
ある種の仕方がないことはどこまでも際限なく仕方がないものなのだ。
そうだよな?
シシマルはいつものように、風呂からあがって、
一人リビングでくだらない深夜番組を見ていることだろう。
いつものように「キャハハ」という明るい笑い声をあげているかもしれない。
できればそうであってほしい。
シシマルが関心を持つあらゆる要素がちりばめられた番組が放映されていますように。
もしかしたら、それでも俺のことを思い出し、心配しているかもしれない。
できればしばらくは俺を思い出さずにいてほしいと強く願った。

もう1本だけ、タバコをすってみよう。
安物のライターの炎は小さく、タバコの先端を赤く点すまでに
少し時間がかかった。

もしも、人が平等でないとするならば、俺の属するところは決まっているような気がした。



03

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ライブ観賞~俺サイド~

昨夜KANのライブに連れて行ってもらいました。
ゲイのネットアイドルKO2君のブログでの呼びかけに
勇気を出して応えてみました
KANのことなど全く知らないのにw
ライブなどについてはKO2君がすでに記事をアップ
されていますのでそちらが詳しいと思います。
あちらでは今回は少しおとなし目だと書いてらっしゃいますが、
初見の感想としてはとても面白くて満足いたしました。
(誘ったKO2君はずっと気を使ってライブ楽しんでもらえるかなと
かなり心配してくれていたけれど)
ある意味くだらないw
でも、そのくだらないは最大級の褒め言葉です。
存分に笑わせていただきましたw
いくつかの歌は深く心に入り込んできて、少しうるっときてしまった。

さて。
実はかなり困っている。
これから書くことはKO2君を戸惑わせることになるのは
十分わかっているのだけれど、書く。
先に謝っておく。スマン。

KO2君はとってもキュートな男の子だった。
予想通り少しシャイなところもあるけど、
話してみると頭の回転は速く、素敵な低音で語られる
言葉はとても洗練されおり、それでいてとてもカジュアルだった。
しばらくするとそれなりにリラックスできて、互いのいくつかのことを
話し合ったりした。
とても信頼できる男の子に思えたので、結構深い話も語ってしまった。
初見でする話ではなかったかもしれないと今になって思ったりする。
不快に思ったことがあったら、ごめんね。
初対面だけれども、互いのブログは読んでおり、
それなりのパーソナルデータをすでに把握しあっているという状態は
とても不思議な感覚だった。
KO2君は結構俺の書いたくだらないことをよく覚えていて、何度か
「え、俺そんなこと書いたっけ?」というようなことがあった。
あらためて自分のいい加減さにあきれた場面。

ライブ中スタンディングで調子っぱずれな手拍子をしたり、
みようみまねで合いの手をいれたり腕を振り上げたりして楽しんだ。
ピアノの弾き語りで素敵なバラードを聴いていたときに、それは突然起こった。
ライブにいくときいつも隣にいるのはシシマルだった。
その錯覚がおこってしまい、となりにいるKO2君の手をいつものシシマルの手
だと思って握ろうとしてしまった。
身長差が幸いした。
いつもの場所に手がなかったことですぐに気づいた。
なんだかその手が気づかれたかと思う恥ずかしさから、照れ隠しに
自分のズボンのポケットに手を入れて、ごまかしてみた。

その瞬間である。
KO2君の手でもいいから握りたいと思ってしまった。
いや、違う。正確にはKO2君の手を握りたいと思った。
不覚にも俺は、KO2君に、恋を、しているのだ。
その予想外の衝動に驚愕した。
控えめにいってものすごく驚いたのだ。
その場から立ち去りたいぐらいの恥ずかしさがあふれ出してしまい、
音楽が全く耳に入ってこなくなった。
奇妙なリズムで心音が鳴り続ける。
さながら警告音のように。
隣にも聞こえてやしないかと本気で心配になった。

別にそんな出会いも期待も(失礼)全くしておらず、
ただブログを拝見して、いくつかコメントのやり取りもさせてもらい、
友達になれたらいいのになぁと思っていただけの動機だったのに。
最初は睡眠不足だからなんか頭が正常に働いていないんだろうという
判断をしてみたんだけれど。
無駄だった。40年間生きてきて幾度か経験した感情だ。
体が覚えている。

しばらく目をつぶってその衝動が収まるのを待った。
寝てるんじゃないのかと間違われたりしたら、誘ってくれたKO2君は
傷つくんじゃないのかと思ったりしたけれど、そっちのほうがずっとマシだった。

ライブ終了後、ラーメン屋のテーブルの向かいで、
おいしそうなから揚げを、小動物の冬ごもりの支度のように
ほおばる彼をしばらくじっとながめていた。
かなり不信に思ったことだろう。
あのとき俺はさよならをしていたんだよ。
どうしようもない感情にね。

それにしても素敵な男の子とデートできるなんて、
つくづくブログなんかやっておくものである。
俺のろくでもない感情を抜きにすればねw




プロフィール

(yore)2BOW

Author:(yore)2BOW
桜田淳子「20歳になれば」の替え歌で

まってください 44歳になるまで
まだ言わないで さよならだけは
まってください 読者の興味
はなれたことは わかってるけど

更新するわ なるべくするわ
43歳のうちに 43歳のうちに

44歳になれば 体重減らす
ユニクロで服が買えるぐらいに
44歳になれば 彼氏をつくる
無理じゃないよね?多分多分w

ラララララララ・・・

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