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父親~中篇その2~

大学に入ると同時に家を出ることにした。

母に思いのたけをすべて話した。
子供のころからのことから、今になって家を出るという自分の考えまで。
母はポロポロと涙を流し、そのまま表情をなくしてしまった。
俺の腕を痛いぐらいに握り締め、何度も何度も頭を下げて
言葉もないまま泣き崩れてしまった。
「違うんだ、僕がいなければ、ちゃんとした家族になるじゃない。
別に家をでたまま会いにこないわけでもないし。
大学の学費も少しはお世話にならなきゃいけないしねw」
「某がいない家なんて何の意味もないやないの」
そう言ってまた泣き崩れてしまった。
でも、決意は固かった。
当時付き合っていた大輔さんからの援助もあって
バイトを2つ掛け持ちしながらも、なんとか
暮らしていくことができる算段をつけた。
兄弟を置いていく形になったことに、心は痛んだけれど。
それは本当に本当に辛いことだった。

しかし、事態は俺が思っていたように回転しなかった。
俺が家を出た数ヵ月後に、母は離婚し、家をでてしまった。
家には残った兄弟とソイツだけの生活になってしまったのだ。
10数年後、当時を振り返って妹は俺にこういった。

「ママにとってお兄ちゃんは特別だったんだよ。
私たちも十分に愛されていたけれど、お兄ちゃんへの愛情は本当に特別だった。
だからお兄ちゃんが家をでてしまったことで、ママの神経はプツンって
切れちゃったんだと思う。
無論、数ヶ月後には私たちをちゃんと迎えに来るって約束してたし、
実際に形はどうあれママは迎えにきたけれど。
でも、誤解しないで。お兄ちゃんを責めてるんじゃないの。
そこまでひどいいじめを受けていることなんて知らなかったし、
家をでてしまいたくなる気持ちもわかる。
お兄ちゃんがいなくなったことでものすごくさびしかったのは本音だけど、
全然うらんでもいない。
むしろ、家を出てからのお兄ちゃんの行動にものすごく感謝してる。
でもね、ただ事実として、そう思うの。
お兄ちゃんがいなくなってしまったことで、すべてが変わったんだって」

母が家を出てしまったことに愕然とした。
妹たちを置いてでてしまうなんて想像の範囲外だった。
母は家を出たその足で、俺のアパートに立ち寄った。
「あなたがそこまでの虐待を受けていたことに気づけなかった。
アイツと上手くはいってなさそうだとは思っていたけれど、
店を軌道に乗せて生活を守るのに必死だった。
あんたは私の前でいい子でいすぎた。私はそこに甘えすぎた。
許せないの、自分が。」
離婚はいいとして、妹たちを置いてきてしまったことに異議を唱える。
「あの店ではもうだめ。アイツがいりびたるから。
新しく違う場所で店を開いて、ちゃんとした家を借りて迎えにいくつもり。
でもね、某、最後のお願い聞いて。あの子ら時々見に行ってあげて。
私はアイツの顔をもう2度と見たくないの。もうだめなの。
あたしの大事なものを壊していたなんて、どうあっても許せないの。」

母の頼みだけではなく、妹たちが心配なので、実家に帰り
晩飯を作ったり、宿題をみたりしてあげると約束をした。

当時彼氏だった大輔さんは断固反対した。
「お前が親に振り回されとるんやないか。
いいか、俺はお前の幸せしか守ることはできひんのやで。
家を出るって事にかんしては、俺も賛成したし、できるか限りの援助もしてやる。
でも、せっかくお前ががんばってるのに、家に戻って子供らの世話してって
そんな話はあんまりやないか。
親が解決するべき話をみんなお前にケツもっていってるだけや。
ええか。お前が妹やお母ちゃんを大事に思う気持ちもわかる。
それがお前の優しいとこやし、そういうお前を好きになった。
でもな、心を鬼にしなあかん場面ってあるんやで。
お前がソイツの代わりに飯作って、あの糞親父がありがとうっていうと思うか?
どうせ、あぐらかいてるにきまってるやないか。
なんでお前だけそんなに苦労せなあかんねん。」
そう言って俺のために泣いてくれた。

学校が終わると急いで家に帰り、買い物をし、実家に戻り、食事の支度や洗濯をし、
夜のバイトに間に合うようにまた走るという繰り返しの日々が続いた。
友達たちと一緒に入ったサークルも抜けることにした。
そんなことやってる時間がない。
妹たちはまだ小学生だった。
家に帰ってカップラーメンで晩飯を済ますようなせつない思いをさせたくはなかった。

アイツとの対立が再び始まるのかと少し身構えた。
だが、数ヶ月ぶりにみる、アイツは少し変わってしまっていた。
以前のような威圧的な態度を俺にとることはなかった。
一気に年をとってしまったように、目に見えてやつれてしまっていた。
俺に対し、おどおどとした態度をとるようになった。
時には、俺が実家に帰るタイミングを見計らって外出するようになった。
拍子抜けした感じもあったが、まぁもめるよりは勿論全然マシな展開だ。

そして母は約束どおり絶妙なタイミングで店を軌道に乗せ、家を用意し
半日で荷造りをして、妹たちを引き取ることに成功した。
アイツに見つからないように、風の速さで。
たった一人残されたアイツがどうなろうと知ったことではなかった。

ある日。
大学の門の前にアイツが現れた。
趣味の悪いシャツの上に薄汚れたスーツを着ていた。
俺が下校する時間なんてわかるはずもないだろうに、ずっと待っていたのだろうか?
身構えた。母親の居所を聞き出すためにやってきたのだと思った。
再び対決の場面だと思った。

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(yore)2BOW

Author:(yore)2BOW
桜田淳子「20歳になれば」の替え歌で

まってください 44歳になるまで
まだ言わないで さよならだけは
まってください 読者の興味
はなれたことは わかってるけど

更新するわ なるべくするわ
43歳のうちに 43歳のうちに

44歳になれば 体重減らす
ユニクロで服が買えるぐらいに
44歳になれば 彼氏をつくる
無理じゃないよね?多分多分w

ラララララララ・・・

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